社会問題について考える

小川 賢治 教授
小川 賢治教授
研究対象は、社会問題や監視社会、勲章制度、イギリスの王制など。担当科目は「社会学入門」、「社会問題論」ほか。京都大学大学院博士後期課程修了。著書に『勲章の社会学』、論文に「イギリス君主制の神話」、「二重の管理社会」、「愛国心の諸相・序説」など。
生活の最後の砦 現在の日本社会には、人々が安心して社会生活を送ることを妨げるような問題が数多く存在している。  [貧困、格差]テレビでは、ネットカフェ難民とか日雇い派遣という言葉がひんぱんに登場し、定職に就けず収入も非常に少ない若者がいることが報道されている。収入が少ないので、結婚しようと思ってもできないことがあり、少子化の問題ともつながってくる。派遣労働というあり方を禁止すべきだという意見も出されているが、それに反対する人もいる。
 失業や貧困は、しかし、若者に限ったことではなく、中高年にも増えていて、恵まれた経済状態にある人と、そうでない人との格差が拡大している。収入の少ない人たちに提供される生活保護を受ける人も増えている。景気が悪くなると、これらの人が一挙に増えるが、景気が改善したとしても、すべてが改善されるとは限らない。経済のしくみそのものにも問題があるからである。
納豆は日本の食品?  [食品の安全]輸入食品に有毒な物質が混入していたことがあった。どの国も食品の製造には細心の注意を払ってほしいものだが、このことは、日本の食料自給率が四十%と低く、多くを輸入に頼らざるをえないこととも関わっている。日本では、口に入れる食品の六割が外国からの輸入品だということである。普段普通に食べている食品でも、ほとんどを輸入に頼っているものも珍しくない。よく例に挙げられるのは天ぷらうどんで、その材料を考えてみると、うどんや天ぷらの衣の小麦と、エビのような中心的な材料は輸入品で、国産品は、ネギと、だしに使うカツオ・昆布ぐらいしかない。日本的な食べ物の代表である豆腐や味噌、しょうゆも、原料の大豆はほとんど輸入品である。気候の問題もあるので、何でも国内で生産できるわけではないが、あまりにも自給率が低いのは問題である。
 [病院たらい回し]急に出産しそうになった妊婦さんが救急車で運ばれても、それを受け入れる病院が見つからず、あちこちの病院をたらい回しにされているうちに亡くなった、というニュースが時々聞かれる。地域によっては、特に産科や小児科など一部の診療科は、医師が足りないので、病院としても受け入れることができず、こういう悲しいことが起こってしまう。先進国だと誰もが思っている日本は、極めて意外なことだが、医師不足なのである。
命綱  [解決]以上の問題はどれも、急いで解決することが求められる重要な問題だが、そのような問題は他にも沢山ある。高齢者の介護に携わる人の数が足りないので、介護の必要な高齢者が必ずしも十分な介護を受けられないこと、年金の掛け金は高くなるのに、もらえる金額は少なくなること、子どもの数は少なくなっているのに、教育に回される政府のお金が先進国にしては少ないこと、女性の経済的地位は以前に比べると向上しているが、それでも、男性に比べると不安定であること、政府の資金は足りないけれども消費税などが重くなりすぎるのも国民には負担であることなど、様々な問題がある。どれも解決は簡単ではないが、少しずつでも改善されていけば良いと思う。  これらの問題を解決・改善するには政治の力が必要である。「自己責任」という言葉が一頃流行ったが、これらの問題を個人の力で改善するのは困難である。これらの問題は社会や経済また政治の仕組みと関わっているので、それらを変えることが必要である。こういう時こそ政治の出番となる。