テレビの見方を変える~番組制作から学ぶこと~

近藤 晴夫 准教授
近藤 晴夫准教授
日本大学法学部卒業。1972年㈱京都放送に入社。ディレクター、報道記者、番組プロデューサー、報道局長を経て2009年4月より現職。専門分野・テレビ放送論/映像文化論。担当科目はテレビ放送論、メディア専門演習、スタジオ放送実習、映像制作実習など。
チームワークが大切。コミュニケーション力を身につけよう 2009年の春はWBCで大いに盛り上がりました。テレビ中継は連日、高視聴率。3月24日の日本と韓国の決勝戦は36・5%、占拠率71%(テレビをつけている人10人の内7人が見ている)という数字を記録しました。平日の昼間の放送とあって、家電量販店のテレビの前には人だかりが、また、街中ではワンセグ携帯に見入る姿が多く見られました。若い人を中心にテレビ離れが進んでいると言われますが、野球ファンも野球のルールがよくわからない人も一緒になって感動させる力をテレビはまだ持っている証だと思います。デジタル放送の時代を迎え、テレビがどう変わるのか注目されていますが、スポーツ中継のように純粋に楽しめ、感動や落胆を共有できる番組が視聴者には変わらず支持されることは間違いないでしょう。
 テレビには、娯楽の機能と情報伝達の機能があります。娯楽番組には笑い、涙、感動が求められますが、そこには心に響き、残るものがあれば最高です。また、ニュースやドキュメンタリー番組には正確な事実と内容の深い掘り下げが求められます。しかし、ここ数年大きな問題となってきたのが、「放送倫理」の問題です。バラエティー番組での人権侵害や過剰演出、ニュース情報番組での虚偽報道、ねつ造など視聴者の期待を裏切る行為が目立っています。テレビは「映像」と「音声」によって伝わる非常にインパクトの強い、多くの人々に共通認識をもたらす影響力の大きいメディアです。そのテレビ番組を制作するのはデジタル時代を迎えても「人間」です。制作者は映像と音声に様々な工夫や演出、表現方法を駆使して、楽しめるよう理解が深まるよう努力します。しかし、高視聴率を求めて面白さや分かりやすさに重点を置くと、過剰演出や虚偽、ねつ造報道という間違いを犯すケースが多々あります。
カメラ この先に見えるものは…  私は、KBS京都で長年にわたってテレビの番組制作、報道の現場に身をおいてきましたが、ライフワークとして取り組んだのが「司法改革特番」です。2000年から8回にわたって、現職の裁判官の生出演や模擬裁判で視聴者に有罪・無罪を問うなど、市民に開かれた司法とはどういうものなのかを問いかけ、シリーズで放送してきました。2009年5月21日、市民が刑事裁判に参加する「裁判員制度」がスタートしました。裁判に関わる市民にとってメディアの事件報道は、その判断に影響を与える可能性が大です。それだけにテレビの責任は重大で虚偽報道は勿論、予断に基づいた一方的な報道は絶対に避けなければなりません。
 映像や音声はカメラワークや編集によって大きく表現が変わります。加えて、デジタル技術の進化で様々な新しい表現方法や架空表現まで出来るようになっただけに、番組の制作者には工夫や演出と過剰演出の違いを認識する倫理感と良質な番組を生み出す力量が一層求められます。
主役は君たちだ。京都学園大学放送局の学生たち  京都学園大学には、最新設備のマルチスタジオ(テレビ・ラジオ)とデジタル映像編集施設があります。映像論やテレビ放送の機能と責任などの理論的な学習とともに、こうした施設を使って番組制作を実体験することで将来テレビ業界を担う人材の育成につながるものと考えます。さらに、番組制作は一人では出来ません。グループワークを通じてコミュニケーション力が培われます。また、制作は根気のいることばかりで、その過程における企画や構成、取材、交渉、編集などは、あらゆる職種で役立つ能力の開発にもつながります。そして、番組が完成した時の喜びと達成感を何よりも一番感じてほしいと考えます。
 京都学園大学の学生放送局(GBS)のメンバーはNHK全国大学放送コンテストのラジオドラマ部門で2006年と2008年に全国優勝しました。この輝かしい成績は、大学の恵まれた最新設備とメンバーの学生たちの学びの成果であると誇りに思ってます。